琵琶の栞


                              

          日本の琵琶には、つぎの5種類があります。


1盲僧琵琶 盲僧が琵琶を伴奏に地神経や釈文、説法などを唱えるもので、宗教音楽にはいります。伝承は、天台宗玄清法流筑紫盲僧と常楽院系統の薩摩盲僧の2系統がある。その起源・歴史には、伝説的要素が多い。最後の琵琶盲僧と言われた日向(延岡)の筑紫盲僧永田法順師が、先年惜しくもなくなり、生存者はいなくなりました。

2楽琵琶  雅楽で用いられるもの。管弦の合奏に用いられる。全長が三尺5寸(106センチ)の曲頸、四弦。弾奏は安座した膝の上に棹を左手に楽器を真横に構え、バチを楽器の腹板にたいし水平に上から下へ孤を描くような形で弦をかき鳴らす。独奏曲もあります。

3平家琵琶 琵琶の伴奏で平家物語の詞章を語る声楽曲。略して、平家、平曲以前は平語とも言った。語り物なので、「うたう」と言わず、「語る」という。南北朝時代に明石覚一検校が出て、曲節を定め、現行のようなものになりました。平曲は、ほぼ200曲に分かれ、一曲ずつ作曲されています。江戸初期に、前田、波多野流に別れ、同中期には中興の祖、荻野検校(名古屋)が出て、両流を学んで採譜、優秀な楽譜を編集し、後世の平曲の伝習に大きな貢献をしました。荻野検校のお陰で現代琵琶奏者の我々もこれを使用しています。江戸末期には名人麻岡検校が出ました。

4薩摩琵琶  九州の薩摩地方に起こり、城山、川中島、白虎隊のような悲壮な戦争物語を語る曲が多い。盲僧琵琶を改良して、楽器を音量の出るようにして、薩摩藩が、新しく教育的歌詞を作り、青年武士を教育しました。江戸末期、名人池田甚兵衛が出て、一流を案出、その曲節は現在まで続いています。妙寿、吉村岳城、池田天舟などが有名。現在では、薩摩琵琶正派として須田誠舟師が活躍しています。吉永錦翁は東京に出て活躍しましたが、その弟子肥後錦獅の門に、天才永田錦心が出て、艶麗で都会的な錦心流を創始しました。現在その全国組織として、百年有余の歴史を誇る錦心流琵琶全国一水会(会長古澤史水)がありますまた昭和に入り、錦心流から水藤錦壌が、女性的な錦琵琶を創り上げ、終戦後は、鶴田錦史が出て、一派(現鶴田流)を創始し、器楽演奏に新境地を開き、ニューヨークフィルとも競演するなど、日本の琵琶を世界に知らしめました。

5筑前琵琶  筑前博多におこった一派。優雅哀婉を生命とする音楽で女性の演奏家が多い。明治中期、盲僧の流れを汲む橘智定が、薩摩に出掛けて薩摩琵琶を研究し、一種の新琵琶樂を創始しました。吉田竹子は三味線音楽の手法を取り入れて新しい形態を作りました。智定は、旭翁と名乗り、以後この流派を橘会と呼び、門弟達は、旭号で呼ばれた。その後五弦琵琶が作られ、主流楽器となった。現在は、橘会と旭会の二派があり、過去の名人として田中旭嶺や高峰竹風が一世をを風靡しました。
 

              

     *出典 琵琶の種類:吉川英史監修「邦楽百科辞典・音楽の友社」より。